【崩壊スターレイル】遺物「荒れ狂う海を進む船長」情報まとめ【Ver.3.3追加】

岸辺の岩礁に、三段櫂船の残骸がまるで巨鯨のように打ち上げられている——それは海の怪物を討伐するため出港した軍船だ。船そのものは波によって海岸まで押し戻されたものの、乗組員たちは大海原に沈んだ。

「ファジェイナの勇士よ。誰でも構わぬ。どうか立ち上がってスキアナを守ってくれ！」国王の悲痛な叫びに応える者はいなかった——海の怪物に立ち向かっても、しかばねとなって海に浮かぶだけからだ。

「これ以上ないほど頑丈で大きな船、そして船員を 50 人用意してくれ。俺がその憎き海の怪物を討ち取ってやる！」そう言って、つば広の帽子をかぶった若き船長が、人混みをかきわけて前に進み出た。彼の帽子は真珠のように輝き、人々の青ざめた顔を一瞬で虹色の光で染めた。その登場は、まるで海の夜明けのようで、一瞬にして地平線が白み始めた。

「俺が世界一の船を造ってやる！」工匠たちは若き船長の気迫に惹かれた。その巨船に使われている木材は、大海原でも永遠に朽ちることがなく、船首にはサーシスの巨木から削り出した板が使われ、預言の力が宿っていた——

「行くがいい。賢者に育てられし弟子よ。神々に選ばれし英雄よ。ファジェイナの狂乱を鎮めるのだ」3日後、船員を乗せたその軍船はスキアナから出航した。

鉛のように重苦しい雲がマストを押し潰さんばかりに覆いかぶさっている。暴風雨の中で軍船は浮草のように揺られ、神聖な木材で作られた甲板も荒れ狂う大波を前に激しくきしんでいる。

「波も風も一年中穏やかだった海域ですら、海の怪物の傍若無人な悪行に染まってしまったか」若き船長は船首に立ち、眉間にしわを寄せながら遠くにある漆黒の雲をにらみつけている…しかし、腕につけているアストロラーベに反応はなかった。

雷が落ち、主帆を支えるロープが音を立てて切れ、船乗りたちは混乱に陥った——若き船長は怒声をあげ、こぎ手たちに号令に従って力を入れろと叫んだ。操舵手には進路を変え、山のような大波をひとつずつ回避するよう指示した。エーグルが導く星の光が輝くまで、ファジェイナの激しい怒りに歯を食いしばって耐えるのだ。すると急に、船長は腕を振り上げて叫んだ。その腕についているコンパスは色とりどりの星の光を反射していた——

「みんな、あの光を追いかけるんだ！嵐を突き抜けるぞ！」

船乗りたちは気力を振り絞り、船の歌を高らかに歌った。軍船は剣の刃のように波を切り裂き、黎明を目指して突き進んだ。

「もうすぐエーグルを鎖から解き放てるぞ！進路を確認しろ！準備よし！進め！」

人の背丈ほどもある青銅の矢が炎をまとい、海の霧を突き破った。しかし、それが海の怪物の鱗に迫った瞬間、粉々に砕け散った。淡く青い触手が人に絡みつく。斬り落とされた触手は船の甲板を転がりながら、恐怖に震える船員たちを呑み込んでいた。

「海の怪物の手足が空中で暴れ回り、泣きわめきながら俺の名を叫んでいた。あれは俺の航海人生で最も恐ろしい光景だった」船長の声は震えを帯びていた。彼は決してうそをついているわけではなかったのだ。

巨大な海の怪物が海面に姿を現し、その絡み合う無数の触手で軍船をしっかりと抱え込んだ。その背は、まるで移動する島のように巨大だった。副長は焼けた鉄槍を無数の鋭い牙が並ぶ怪物の口へと突き立てた。生臭く黒い血が甲板全体に広がった。幸い、船員たちは間一髪で危機を逃れた。しかし、船長が振り返ると、船尾のやぐらが巨大な触手にたたきつぶされていた。その光景はまるで、ニカドリーの天罰の矛がクルミの殻を砕くかのようだった。これは千載一遇のチャンスだ。突撃するべきか、それとも逃げるべきか。全員が船長の顔を見て決断を待っていた——

「取り舵いっぱい！こぎ手たち、全速前進！帆をすべて張れ！衝角で体当たりだ！」

船長のマントが荒々しい風の中で激しく舞い踊る。船員たちも死をまったく恐れていなかった。鋼鉄と鱗がぶつかる。船の竜骨が折れ、海の怪物が悲鳴をあげる。その巨体はかつての力を失い、ゆっくりと海の底へと沈んでいった。

どことも分からぬ海岸で、若き船長は仰向けに倒れていた。沈みゆく夕日が砕け散った岸辺に黄金の輝きを添えている…この光の中で、遥か遠くにあるスキアナが、まるで手が届きそうなほど近くに感じられた——彼は、これが人生最後の瞬間であることを悟った。

「…俺たちはファジェイナの狂気を抑え込んだ」海の怪物は海深くへ逃げた。 100 年は海岸を襲うことはないだろう。

サーシスの巨木から切り出された板が、船長に最後の問いかけをした。その板は波に乗り、彼が思いを抱くスキアナへと戻るだろう。そして、英雄の航海を伝え、より多くの若者たちを海へ出る勇気を与える。船長は切断された自分の体の半分を見た。そこには師からもらったブーツがあった。それはいくつもの都市国家を旅する彼を支えてくれた…しかし今、彼の長い旅はここで終わろうとしている——

「皆に伝えてくれ。俺はまだステュクスを征服しなければならない。故郷よ、どうか悲しまないでくれとな」

海の風は、年を重ねるたびにスキアナの城壁を優しくなでる。海の怪物の伝説は、母が子供を寝かしつける子守歌となった…そして、あの荒れ狂う海から奇跡的に生還した船乗りたちは、今もなお、船長が波の上を歩いて帰ってくる日を待ち続けている。